徒然雫

☆もの悲しさ疼く物語☆

憂愁  *400文字の雫物語

 

≪400文字の中に、ひたむきな想いでもの悲しさ疼く物語≫

 

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憂愁

ひたむきな想いが後を追ってきて、憂愁の影が伸びてゆく。


落とした絵の具が画用紙の上で広がってゆくように、木々がぱっと朱色に染まった。

誘われるままに美術館へ来たけれど、ズシリと重いものがこびり付いて離れない。

あの時、壁に飾られた絵画よりも隣にいるあの人へ心が惹かれていた。

でも今は、壁に飾られた絵画の方へ心がもってゆかれる。


帰りの駅のホームで「もう二人だけで会わない方が、いいと思う」と伝える。

「なんで?」と少し怒った表情で責められる。

「友達として出かけよう」と言う掠れた声とぎこちない笑顔に、また負けそうになる。

素っ気ない態度が想いを離れさせてゆくと思うなんて、浅はかだった。

まだあの人への想いに囚われている私が、そんなこと無理だってよく知っているのに……。

人目をはばからずに泣き始めた彼。

そんな彼を置いて立ち去る優しさが、私にあればいいのに……。


木の葉が舞い落ちる音が聞こえてきて、憂愁の影に捕まる。

 

 

 

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