徒然雫

☆もの悲しさ疼く物語☆

玉響  *400文字の雫物語

 

≪400文字の中に、始まりかけた恋の思い出にもの悲しさ疼く物語≫

 

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玉響

空が黄色く染まる季節に駅の改札口に立つと、忘れたはずの玉響の恋にふっと追いつかれそうになる。

あの頃、三歳差が今よりもっと大きく感じられ、彼の若さがただただ眩しかった。

待ち合わせをしていないのに、職場近くのカフェで待てるのは彼が学生だったから。

並んで歩いただけなのに、何気なく手をつなげるのは彼が優しかったから。

恋人同士でもないのに、旅行へ誘えるのは彼の青くはやる気持ちから。


あの時、二人がつないだ手と手の間には玉響の恋がひそんでいた。

それだけで十分な彼の手とそれだけじゃ不安な私の手が、分かれ道のところであっけなく離れた。

あの時、もし彼が私を駅の改札口まで見送ってくれていたら……。

あの時、もう少し玉響の恋を温めることが出来ていたら……。

破れた恋の痛みが深く残っていた私には、そんな他愛のないことが殊の外大切だった。


駅の改札口を抜けてしまうと行き交う人々の喧騒に掻き消され、玉響の音はもう聞こえない。

 

 

 

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