徒然雫

☆もの悲しさ疼く物語☆

姑息  *400文字の雫物語

 

≪400文字の中に、クリスマスが近づく一時のがれのもの悲しさ疼く物語≫

 

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姑息

「俺、お前のこと好きみたい」

澄んだ冬の陽射しが射し込む教室のざわめきの中、そう聞こえたような気がした。

私に恋人がいることを知っている彼がそんなこと言うはずがないのだから、都合のいい聞き違いかもしれない。

 

授業中、彼とこっそりするおしゃべりは楽しかった。

あまり連絡をくれない恋人が空ける心の隙間を埋めてくれていた。

「俺のこと、夢でみてくれよ~」という彼の冗談を、教室ではみんなと一緒に笑って受け流していたけれど、触れたら切れそうな月を見上げていると彼の言葉は静けさと共に心にしっとり沁み込んできた。

それでも私は公園を楽しむ恋よりも、ワインを楽しむ恋に憧れた。


まだ生暖かさの中で浮かんでいたい私は、彼の言葉をヒラリと躱す。

こんな季節だから、彼も『好き』という言葉を誰かに使ってみたかっただけなのかもしれない。

教室から見えるモミの木ではないのにクリスマスの飾りつけされた色彩の失せた木が、物憂げに揺れている。

 

 

 

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