徒然雫

☆もの悲しさ疼く物語☆

憫然  *400文字の雫物語

 

≪400文字の中に、憂苦に囚われもの悲しさ疼く物語≫

 

f:id:nemurialice:20181229130747j:plain

憫然

夫がまだあの女と逢瀬を重ねている。

罰なのだと思う。


三か月前「寂しかったから……」と目を伏せた夫に、「ごめん」と呟いてしまった。

惨めな姿を晒したくない私は、夫より私が悪かったことにしたのだ。

怒りを封じ込め、物分かりのいい振りをしたのは、捨てられてしまう憂苦からだ。

何度も回る秒針が空気を震わせるほの暗い部屋の中、両手で顔を覆うとある風景が流れたきた。


うっとおしいくらい眩しい光が、傷付きやすい蕾を押し込めた白い体操服を照らす。

色とりどりのハチマキが騒々しい音楽に合わせたなびき、黄色い歓声が湧き上がる。

ムードメーカーの男の子が、観覧席から内側に入りカメラを構える。

白いラインの間を走る隣のクラスの女の子の揺れる胸にピントを合わせ、連写する。

「やめなよ~」と媚を売るように笑顔を貼り付け注意するあの頃の私。

断罪よりも、自分の地位を守った。

嫌悪感を出せていたら……。


ガチャリと玄関を開ける音が、風景を割く。

 

 

 ★他作品も小説WEBサイトアルファポリスにて掲載いたしております。

 こちらからお願いします 

ねむりありすのWebコンテンツ | アルファポリス - 電網浮遊都市 -