徒然雫

☆もの悲しさ疼く物語☆

喪失  *400文字の雫物語

 

≪400文字の中に、失われてゆくものへのもの悲しさ疼く物語≫

 

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喪失

彼女の歯に衣着せぬ発言から滲みだす満たされている者独得の朗らかさが、苦手だった。

優しい両親や素敵なお兄さんからとても大切に、とても可愛がられてきた彼女はとても素直だったのだろう。

 
レンゲの花の揺れる帰り道、彼女は私のこっそり気にしている外見のある部分を気持ちいいほどはっきりと指摘してきた。

欠点をさらけ出すことが心の繋がりを深めるだなんてあの頃はまだ知らなくて、忍ばせた感情を誤魔化すために笑顔をつくった。

いつも素っ気なくかわされるのが面白くないのか、彼女の言葉はしだいに鋭い棘となっていった。

ある日、私は喉元まで迫り上がってきた反撃をのみ込み、口を噤んだ。

俯くと、レンゲ道の季節はもう過ぎ去っていたことに気が付いた。


卒業してから数年後に偶然、彼女と会った。

別れ際、「話しかけてくれて、ありがとう」とポツリと言った彼女を思うと、欺き合いの関係に慣れてきた私の奥深くで、抜けないままの棘がズキズキ疼いた。

 

 

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